第30章 旅立ち~相澤消太~
秋彦達が帰ってからの1週間はあっという間に過ぎた
学校へ退学の手続きをして必要最低限の物は手元に残して残りの荷物は先に向こうへと送った
荷物をまとめていて思ったことは最初の頃よりも荷物が多くなっていたこと
最初の頃は大きめのキャリーケース一つで良かったのに今度は段ボール2つ分もあった
それだけ長く一緒にいたのかと思うとちょっと感慨深かった
「何だ、結局段ボールにまとめたのか」
ひょいと部屋を覗いてくる消太に華は見て見てというように段ボールを叩いた
「綺麗に入ったの、凄くない」
「別に持っていかなくても帰ってくるんだから置いてけばいいだろ」
さらりと言う消太に華は少し頬を膨らませた
「もう、何度も言ってるじゃない、消太くん家で使ったものは向こうでも大事に使うの」
折角、消太に買って貰ったりしたものを置いて行くとか使わないとか華の頭にはそんな選択肢はない
華にとっては消太と一緒に過ごしてきた大事なものだ
「はいはい、じゃあ帰ってきたらまた新しいの揃えるか」
ポンポンと頭を叩いて華の顔を見る消太の目は甘い
「ゆ…夕食!今日は最後だから豪華だよっ!」
消太の視線に居たたまれなくなって慌てて立ち上がると逃げるようにキッチンに向かった
ここ数日ずっと いや、あの日から消太が異様に甘い
きっと本人は自覚をしていない、だからこそ質が悪い
無意識にスキンシップが多くなった
本人にそれとなく伝えるけど「そんなわけないだろ」と返ってくるが明らかにそんなわけあると華は自分の中で突っ込みをいれていた
いや、今までの事を考えると嬉しい気持ちもある だけどいかんせん慣れていないので恥ずかしいが勝ってしまう
「今日は俺も手伝う」
にゅっと料理をしている華の背後から顔を出した消太にビクっと肩を揺らすが落ち着かせるように一呼吸置いて
「じゃあ、サラダ作るから野菜をちぎって」
「ん。」
洗った野菜を渡すと黙々と慣れない手つきで野菜をちぎる姿は他の生徒には見せられないなと思うと胸がほっこりとした
そうして私達は2人で作った最後の料理を笑って食べた