第29章 決意〜相澤消太〜
バタバタと慌てて帰ってくる華の姿に驚いたように消太は振り返った
その顔はなんだかやけにスッキリとしていた
「消太くん!私決めたの!」
帰ってきて早々 そう声をあげる姿に消太は
あぁ、彼女は行くことに決めたんだなと感じた
「向こうに行って沢山勉強してくる!」
「…そうか、それは「それで卒業したら帰ってくる」
予想通りの言葉で僅かに逸らした視線を被せるように聞こえた言葉に驚いてすぐ華の方へ顔を戻した
「…っは?」
「私、消太くんが両親と一緒がいいっていうの何となく分かったよ、だから向こうに行って沢山勉強して、家事も料理もまだまだ頑張るから」
何を言ってるんだ?家事も料理も勿体無いくらい完璧なのにこれ以上どこを頑張る理由がある?
「だから好きな人の…消太くんの側に帰って来ていい?」
その言葉に弾かれたように華を抱き寄せていた
何を考え込んでいたんだ
真っ先に答えを出さないといけないのに
言葉よりも先に行動してしまうっていうのは本当なのかもしれないと思ったのはこの瞬間だけだ
「しょ…消太くん?」
突然の事に華はアワアワと慌てるが消太は更にきつく抱きしめた
「いい、そんな事しなくてもいい」
「えっ!?それは帰ってくるなと「違う」
「理由なんてどうでもいい、俺のトコに帰ってこい」
そう言う消太に驚いたように目を丸くするも
「お前がいないと寂しいんだ」小さく聞こえた声に 直ぐに顔をほころばせ「うん、帰ってくる」と今度は華からもぎゅっと抱きついてきた
その様子に消太の顔も緩む
「俺は今のお前がいい」
ぼそりと呟いたら聞こえたのか、少し照れたように華が笑った
「…消太くん、私 消太くんが好きなの」
「あぁ、俺もだ」
抱き付いたままそう告げる華に消太は少し力を込めて抱き締め返した