第29章 決意〜相澤消太〜
そう梅雨に吹っ切れたように言うと「行かなくちゃっ」と言って踵を返す華の後ろ姿を梅雨は手を振りながら見送った
「きっと上手くいくわ」とポツリと呟いて
その頃、消太はリビングを1人ウロウロとしていた
迎えに行きたいが入れ違いになったらどうしようかと思って中々家から出られない
連絡しようとも思ったけど携帯はテーブルに置いていったままだった
「くそっ」クシャクシャと前髪を弄りながら もう少し言い方というのがあったのではないかと後悔する
華には親元へ行けなんて自分の考えだと主張したが、本当は違った
前日、消太は一緒に飲んでいた華に父親 秋彦にある提案をされた
「消太なら僕が今から言うこと分かってくれるよね?」
そう言ってにぃっと笑う秋彦に消太は嫌な予感しかしなかった
「なんです?もう、そうそうの事じゃ驚きませんよ?」
言いながら消太はギィっと少し軋む椅子に深く座り直した
そう思うけど、いつも想像の斜め上の事を言うからなと少し身構えた
「いや、実はさ 結構仕事が上手くいってて向こうに永住しようかと思うんだ」
「え・・・?それはいい事じゃないですか?」
予想外といえばそうだが仕事が上手くいっているのならおめでたいことなのではないか?
「そう、ここまではいいめでたい話だと思うんだ。じゃあ華も一緒にって言ったらお前どうする?」
「それを言う為に俺を誘ったんですか」
「さすが消太 頭が良く回って僕は助かるよ」
コトリとビールのグラスを置くとニッコリと笑ってはいるが秋彦の笑みはじっと消太の反応を伺っていた
「別に最初はこのままでもいいと絵里とも話してたんだ、だけど雄英での事件もあるし 寮生活にもなるって連絡来たし それなら僕達の元で生活してくれたら安心だなぁって」
そう、時間がある時には逐一こちらの様子を報告していた消太は雄英で起きた出来事、そして寮生活が義務付けられることも話していた
「あっ、別にお前や雄英の先生を信用してないわけじゃないからな、ただの転勤ならいいけど やっぱ永住となると家族一緒がいいなと」
慌てて付け加える秋彦に消太は小さく首を振った
「その気持ちはよく分かりますから」