第29章 決意〜相澤消太〜
「あのね、昔読んだ本でこんな事が書いてあったの」
そう言うと梅雨は思い出すかのように華に昔読んだ本の話をし出した
「人間ってね、例えば自分の寿命が100歳だとするじゃない?そうすると両親と居られる年月って短くて5分の一くらいしかないそうよ」
「えっ!?短っ!20年くらいしかないじゃない、何で!?」
あまりの短さに思わず華は驚いてしまう
「男の人はどうか分からないけど、女の子って大体早くて20歳近くで結婚するじゃない?そうすると親元を離れる事になるんだから中々会わなくなってしまうじゃない?そうすると両親と一緒に過ごせるのって考えたら短いと思わない?」
「た・・・確かに」
梅雨の言葉に華は納得したように頷いた
深く考えた事のなかった華にとっては考えさせられる言葉だった
今まで生まれてから今日までずっと両親がいて、側にいるのが当たり前だと思っていた華は確かにいつか自分が結婚して家庭を持ったとしたら中々会う機会なんてそうそうなくなってしまうのだろう、それがお互い遠く離れた地になってしまったら尚更だ
「だからその人は華ちゃんに親元に行けなんて言ったんじゃないかしら」
「そうなのかなぁ・・・・」
「子供のやりたい事を応援して見守るのも愛情だけどその人は両親と一緒に過ごして欲しいってお互いを思った愛情なんじゃないかしら」
ケロケロっと笑いながら「私はその人じゃないから分からないけど聞いたらきっとそう言うわ」
「華ちゃんに後悔して欲しくないのよ」
梅雨の言葉に華はふと考え込んだ
今更だが、今の私の選択に後悔はないのだろうか 好きな人を諦めようと無理やり雄英に入って諦めるどころか益々好きになってその思いを伝えるどころか 今の関係の空気が心地よくて自分の気持ちの奥底の疑問に蓋をしていたような気さえする
これでいいの?
ずっと自分の気持ちを押さえ込んで側にいることを選ぶの?
ちゃんとしっかりと消太くんの気持ちも考えた?
今はどう考えているの?
知りたい でも怖い
グルグルと考え込むけど 出した答えは1つだった
「梅雨ちゃん!話聞いてくれてありがとう!」
ギュッと梅雨の手を掴むと「やらないまま後悔するよりもやって後悔したいみたい」