第27章 理由〜相澤消太〜
その頃、消太と秋彦は居酒屋にいた
「あ〜っやっぱりビールには焼き鳥だよねぇ」
言いながらビールを持つ反対の手でネギ間を手にすると秋彦は美味しそうにかぶりついた
「そんなに焼き鳥食いたかったなら家族で来れば良かったじゃないですか」
カウンター席で隣に座っている秋彦に短いため息と共にそう零すと消太は自分のグラスに入っているビールを一口飲んだ
「ノンノン、消太は分かってないなぁ こういう所は男同士で来るから美味いんだよ」
「はぁ、そういうもんですか?」
串を振りながらそう言う秋彦に深くは突っ込まない事にした
「それに、2人で話したいこともあったし・・・・どうだい?娘との同居は?迷惑掛けてないかい?」
ボソッと呟いた言葉をかき消すように秋彦は消太に明るく聞いた
「どうっていうか・・・・・まぁボチボチですね。やっと誰かが家にいるのに慣れた感じがしますね」
秋彦の質問に消太は当たり障りなく返した
たまに喧嘩した事や華に対しての気持ちを話すのはまだ違うと思った
そもそも俺が可愛い娘にそういう感情を抱いてると知ったらどう思うだろうか
いや、もしかしたら気が付いているのではないかと
そう思うがわざわざ自分から口にする事は躊躇した
「いやぁ、消太と華がまた仲良くなってくれて良かったよ、お互い頑固だからなぁ、何かきっかけがあればいいと思ったんだよ」
焼き鳥の串をフリフリと動かしながら上機嫌で話す秋彦は、ウンウン、いいきっかけだったと1人頷いている
「頑固って別に・・・・華が勝手に俺を避けていただけで」
別に昔喧嘩などもした事も怒鳴ったこともなかったから突然避けられたのは思春期特有のものだと思い込んでいたから
最初の頃でさえ その原因を探ろうとも思ったが、今 目に映る華の姿は昔のように俺に笑いかけてくれる姿だから
避けられてた理由なんて綺麗さっぱり聞き出すのも忘れていた
「それで、消太は華が避けてた理由は分かったのかい?」
「いや?それがさっぱりで、それにまた懐いてくれてるんならそれでいいですよ」
言いながらビールを飲む消太に秋彦は「ふ〜ん」と言って同じようにビールを飲んだ