第27章 理由〜相澤消太〜
「あ、お帰りなさい、消太くん」
扉の音に気が付いて華が少しぎこちなさそうに消太に告げると、華と話していた人物がくるりとこちらを向いた
「やぁ、お帰り。しっかり先生してきたかい?」
「・・・・秋彦さん」
楽しそうな顔をして振り向いたのは華の父親で海外へ転勤している秋彦だ
その向かいには華と隣り合うようにして座っている絵里の姿もあった
「ごめんなさいねぇ、消太さん。連絡もなしに急に訪ねて」
申し訳なさそうに言う絵里の言葉を遮るように「自分の娘に会いに来て何が悪い!」
そう言いながら同意を求めるように話を振る秋彦に華は苦笑いをしていた
「いや、悪くはないんですけど急だったから」
ポリポリと困惑気味の表情の消太に秋彦は楽しそうに笑った
「これがホントのサプラ〜イズ・・・・ってのは冗談でたまたま休みがちょっと出来たから顔を見に来たんだよ」
突然来たのには驚いたが、華が嬉しそうな顔をしているのでまぁいいかと思えてくる。
それに2人で過ごすのは少しばかり気まずいのが本音だった
「2人はいつまで日本に?」
空いたソファに座りながら2人を交互に見ると、絵里が考えるように宙を見た
「え〜と、今日着いたから明々後日には帰るわ」
にっこりと笑いながら隣にいた華をぎゅーっと抱きしめた
「だから今日は私とご飯食べましょ?」
抱きつかれながら嬉しそうにコクコク頷くがふとこちらに視線を移した
「あ・・・でも消太くんは」
「俺は別に1人でも・・・・「何だ消太1人は寂しいか?しょうがないな、僕が付き合ってあげるよ」
突然秋彦がそう言うと、ガシっと首根っこを掴まれてズルズルと玄関に引きずられていく
「えっ!?おいっ!ちょっ・・・・!「絵里と華は女同士デートしておいで。何、僕と消太も男同士でデートしてくるからっ」
「なに気持ち悪いこと言ってんですかっ!そもそも俺は・・・・・・」
そう言い残して、声がだんだんと遠ざかっていく様子に華はただポカンとするしかなかった
2人が出て行った後を見つめてすぐに絵里の方を見やると絵里はニコニコとその様子を見ていた
「さて、華ちゃん。私とデートしましょう?」