第27章 理由〜相澤消太〜
今日の仕事を全て終えて帰路につく消太の足取りは重かった
それも朝の会話を思い出すと益々足取りが重くなる
学校で決まった事とはいえ華に伝えるのは気が咎めた
だが、他の教師から聞いてショックを受けさせるより自分の口で伝えてショックを受けさせる方がマシと思ったが
予想以上の華の動揺っぷりに自分まで動揺を見せるのはいけないと思い、淡々と平然な素振りで告げた事に今更ながら失敗したと思った
出来る事ならこのままずっと過ごしていきたいと思った矢先の事態に内心慌てた
せっかく昔のように笑って過ごして、自分の生活には欠かせない大事な存在だと今更ながら気が付いたのに
本当は寮生活も何とか色々と理由をつけてA組の寮に入れないものかと本気で考えた
だが、仮にも教職の身でそんな事が出来るわけがない
そんな自分の独り善がりな行動で華を困らせるわけにはいかないと思った
大事な存在だと愛しいと思う気持ちも自分の中で募っていく
それと同時に今と変わらずの関係でずっと一緒に住んでいくのも最近苦しかった
その内にふとした瞬間に華を抱きしめてしまいそうで
あの小さな身体を自分の胸に納めたくなって
あの甘い香りをもっと近くで感じたくて
でも その一歩を教師と生徒 先輩の娘という壁のお陰で踏みとどまっている
同居解消はお互いにとって いいタイミングなのかもしれない
そうじゃないと自分の中でガラガラと壁が崩れていきそうだ
「どうしたものか・・・」
グルグルと今朝の華の表情を思い出すと短いため息が漏れる
そうこうしている内に玄関の前まで着いていて、鍵を開けて扉を開けると家の中から華と一緒に誰かの笑い声が聞こえた
お互いに知り合いを招き入れることは暗黙のルールでしていなかったので華に限ってそんな事はしない
ただのテレビの音だろうと思いながらも慌ててリビングのドアを開けると華は楽しそうに誰かと話していた