第26章 転機〜相澤消太〜
それからすぐに合宿中に敵に襲われた事と雄英生の誘拐 そして平和の象徴オールマイトの引退
本当に駆け足のように過ぎて行った
消太くんは対応に追われていてバタバタと動いていたから ゆっくりと過ごす時間はあまり取れなかった
その間の私といえば、力になれることはあまりにもなくて、せめて忙しい時にもすぐに食べられるように簡単な料理を作っておくだけだった
それから暫くしていつもと変わらない日常に戻りかけたある日、学校に出掛けようと靴を履いていたらとても珍しく消太くんが玄関まで顔を覗かせてじっと私を見つめていた
「・・・・?何・・・?」
「今日 ホームルームで聞かされるかもしれないが先に言っておく、雄英生徒の安全を考えて、もう少ししたらクラスごとの寮が完成する」
「・・・え?」
「今から生徒の家に行って承諾の許可は貰うことにはなるがお前の親は海外だし、責任者は俺になってるから問題はないだろう」
「それって・・・私は普通科の寮で消太くんは1-Aの寮になるって事?」
「そういう事になるな」
淡々と話す消太に華は慌てたように消太に食いついた
「ちょっ!・・ちょっと待って!消太くんはそれでいいの!?」
「・・・いいもなにも決まった事だろう?」
顔色も変えずに告げられた言葉に華はなんとも言えない気持ちが襲った
「そう・・・そうだよね、うん。へへ、遅れちゃうから学校に行くね」
ぎゅっと拳を握ると、作ったような笑顔を消太に向けて逃げるように玄関を後にした
勘違いしていた
昔みたいに話せていたから
一緒にご飯を食べるのが心地よかったから
私に向ける顔が少し優しくなったから
距離が近くなったと思ったんだ
少しでも好きでいてくれてるんじゃないかと
思い込みをしていたんだ
私と消太くんは同居人
先輩の大事な娘
先生と生徒
それだけだった