第2章 懐かない猫はかわいい
熊谷くんに飲みに行きませんかと誘われたので今日は1度家に戻ってから着替えて待ち合わせ場所に向かう。熊谷くんは洞察力が鋭い人で、私が表田くんに何かしら惹かれているのにすぐ気付いたらしい。
真面目な人なので表田さんのプライベートな事は教えてくれたりしないし、私もそれを望んでないからしないけれど私が素敵な人だね、と言うとそうですね、と返してくれる。それが嬉しくて有難い。
熊谷くんは、表田さんが私をどう思ってるように感じてるんだろう。
それを私はずっと聞けずにいる。
「ねえ〜、どうやったらモテますかね〜」
目の前で兎原くんがグダグダと言うのを聞きながらうーん、と首を傾げる。私も知りたいくらいなんだけどなあ、と思いながらお茶飲む?と湯気の立つ湯呑みを差し出した。
熊谷くんと待ち合わせている場所に行くと、そこに兎原くんがいたのだ。どこか行くの?俺も行く〜と着いてきたらしく、熊谷くんはむっすりとした顔ですみません、と謝った。
表田くんの事ばかり考えてはいるけどせっかく知り合ったので仲良くなりたいというのは確かだから歓迎して飲み屋に入った。は、いいものの。
「うーん、誰でもいいから可愛い子と付き合いたいって言うクズ思想を捨てたらいいんじゃないかな……」
「辛辣……」
「なんて言うんだろう……誰でもいい、って兎原くんが適当に可愛い子に手当り次第話しかけてるって時点で相手への誠意がないってことである程度男を見る目がある子は引くと思うな」
つまり男慣れしてない子を狙えばワンチャンありますかね?と食いついた兎原くんを熊谷くんがチョップする。そこをそうとるからダメなんだと思うけどなあ、と私もグラスで隠した口元で苦笑する。
「多分兎原くんは適当な会話のきっかけのために好きでもないものを好きって言ってることあるよね?別に自分の好きなもの言えばいいし、相手の好きなことの話を聞いたらいいと思うよ。自分を持たない人間と自分の話をちゃんと聞いてくれない人間は嫌われるよ」
「どうしよう、正論で殴ってくるタイプの人だ熊谷」
「いや、実際そうだから有難く聞いとけ」
熊谷くんは辛辣にそう言いながら眉根をくい、と寄せる。
正論ってわかるくらいの理性があるならやめとけよ、という気配を感じる。
「自分の好きなものとか、興味のあることの範囲が被れば話題を作って話す。それに尽きるよ」
私がそうだもの。