第2章 懐かない猫はかわいい
件名:相談があります
To 表田 裏道
こんばんは。最近冷えてきたね、怪我に気をつけて。
ちょっと相談があるんだけど、ほけんだよりでちょっと困ってて。捻挫とかの予防を防ぐために冬場の運動は筋肉の温度をあげるのが重要だと思ってて、いいストレッチ方法があれば載せたいんだけれど……知恵があれば貸してほしいな。
From 遅実 早苗
件名:Re:相談があります
To 遅実 早苗
小学生だったらすぐに筋温上がると思う、基礎体温高いし。
ダイナミックストレッチがいいんじゃない。
From 表田 裏道
件名:Re:Re:相談があります
To 表田 裏道
つまりラジオ体操?
From 遅実 早苗
件名:Re:Re:Re:相談があります
To 遅実 早苗
うん
From:表田 裏道
「わかった、ありがとう……っと」
ぽち、とボタンを押すとメールが送信される。メールの件名のReが途切れて少し悲しい。
あれから、表田くんとは連絡先を交換して今はこうしてなにかしら口実を作ってはメールのやり取りをしている。表田くんはあまり愛想がない、素っ気ない内容ではあるけれど毎回律儀に返事をくれるのでそれに甘えるようにメールを送っている。
私はあの日、あの時、あの野良猫のような眼差しをした表田くんに恋をしたのだ。
未だにやり取りはメールだけで、二人で飲みに行ったりするような仲には発展していないけれど。最近少し嬉しいことがある。
ぴろりん、とメールを受信したので携帯をみる。送信者は表田裏道。急いで開いて中身を確認する。
件名:さっきの件だけど
To 遅実 早苗
どういたしまして。
ほけんだより、まだスペースあるなら冬場は乾燥するから汗かいてなくても水分補給するようにって書いといた方がいいと思う。
From 表田 裏道
胸がきゅっとすぼまってから一気に拡大するような感覚。ぽっ、と温みが灯るあの感覚が表田くんへの想いへまたくべられる。
律儀で、優しくて、思いやりがあって。きっと面倒くさくてどうでもいいような私の相談や雑談にいつも反応をくれて、差し出がましくはないか迷っているようなメールを追加送信してくれる。
「好きだなあ…」