第5章 恐怖の島で過去は巡る (スリラーバーク編)
『ええ!?』
鏡に映らないし、よく見たら影もない。
再び頭が追いつかなくなってきた。
「影は・・・数年前、ある男に奪われました。」
影が奪われるなんて、そんなことが実際にあるのか。
ブルック曰く、影のないものは直射日光を浴びると消滅してしまうという。
そんな人生だというのに、ブルックはとても楽しそうだった。
『ど、どうしたの・・・?』
「おいおい、大丈夫か。」
私とウソップの心配の言葉をよそに、ブルックはヨホホホと声を上げている。
「今日は何て素敵な日でしょう!人に逢えた!」
「「「「!」」」」
「今日か明日か日の変わり目もわからない、この霧の深い暗い海で、たった一人舵の効かない大きな船にただ揺られて彷徨うこと数十年!私、本っっ当に淋しかったんですよ!淋しくて、怖くて、死にたかった!」
そのブルックの悲痛な叫びが、ジンと胸に響く。
1人でいることがどれだけ寂しいことか、私はよくわかるから。
ブルックは、影がなくそれを取り返したいことを理由にルフィに仲間になることの断りを入れる。
「何言ってんだよ、水くせぇ!だったら、俺が取り返してやるよ!そういや、誰かに取られたって言ったな!誰だ!」
しかし、ルフィは諦めていなかった。
そうやって厄介ごとに無理矢理突っ込んで、でも助け出してくれるのがルフィだ。
ブルックは敵の名前を教えてくれはしなかった。
ただ、死ぬ前は音楽家だったようで、歌を披露してくれようとしたところでソレは現れた。
「ぎゃあああ!ゴースト!!」
その声で後ろを振り返ると、目の前にはゴースト。
『いやああああ!!』
あぁ、もう頭が回らない。
そこで私の視界はブラックアウトした。
いいえ、断じて幽霊の類が苦手なわけではないですよ、断じて。