第11章 過去の傷跡
「なぁクレア、会うのは何年振りだったか?」
『…………。』
レイヴィスの問いかけに私は口を開くことが出来なかった。
彼と最後に会ったのは、もう4年も前のことで、あの時私は15歳だった。過去に戻れるのなら、私は決して彼のことなんて信用しないのに。
「誰だって聞いてんだ、質問に答えろ。」
ゾロが殺気立ちながら剣をおさめることはしなかった。
「はぁ……かの有名な”麦わらの一味”ってのはこんなにも粗暴なのか。ちょっと期待はずれだなあ。まあいいや。俺は”べトレイ海賊団”の副船長レイヴィスだ。よろしく。」
レイヴィスは剣を突き付けられながらもゾロに対して手を差し出して握手を求めた。
ゾロはその手を一瞥したものの、特に剣をおさめることも握手に応えることもせず動かずにいる。
レイヴィスはわざとらしく悲しげな顔をつくって手を下ろした。
「いいの? ここで争いを起こしたら仲間に迷惑がかかるってわからない?」
「余計なお世話だ。」
レイヴィスの言葉にゾロが端的に返したが、私は理解していた。レイヴィスはゾロではなくて私に言ったんだ。
『ゾロ、剣を下ろして。』
私はやっと声を発して、それからレイヴィスと向き合う。
彼はようやくこっちを見たか、というように満足げに笑みを浮かべた。
「急に逃げ出したから心配してたんだぜ? そしたら麦わらの一味なんていう違う海賊団で懸賞金までかかってやがる。」
『私は、私の居場所を見つけたから。』
レイヴィスは私の答えを聞くと、つまらなそうにスッと笑みを消した。真顔で、ジッとこちらを見つめてくる。
「大人しく戻ってくれば、今なら許してやるぞ。」
一体何について許されなければいけないのだろうか。
戻るなんて絶対にありえない、許されたくもなければ許したくもない。
『嫌よ、絶対に戻らない。』
手が少し震える。
これが私の精一杯の抵抗だった。