第11章 過去の傷跡
私はレイヴィスの目を逸らさないようにと睨みつけた。
数秒の間が何時間にも感じられる。
今にも逃げ出してしまいたかった。
「後悔しても遅いぞ」
『後悔なんてしない』
この先もずっと、ベトレイ海賊団にいれば良かったなんて思う日は来ない。
かつて船から逃げ出さなければ、私は麦わらの一味のみんなと出会えなかった。あの時の判断は正しかったのだと思い続けることだろう。
「おい、オレの仲間になんか用か、おっさん」
私の前にスッと現れたのはルフィだった。
「失礼だな、おっさんて言われるほど歳じゃないよ」
後ろ姿が目に映って、ルフィがどんな表情をしているかはわからなかったけれど、少し怒っているようにも思えた。
「クレアはオレたちの仲間だ。お前たちのところには戻らねェ」
「それを決めるのは君じゃないよね?」
両者の間にバチバチと火花が散る。
今にも衝突が起きてしまいそうな雰囲気だったが、遠くからコツコツと足音が響いた。
近づいてきたのは支配人であるソフィアさんだ。
「そこまでです」
ルフィとレイヴィスの間に割って入る。
「ここでは争いごとは御法度、そうお伝えしたはずです。ご贔屓いただいているレイヴィス様といえど、例外ではございません」
「勿論、わかっていますとも」
ソフィアさんの仲裁のかいもあって、その場は無事におさまった。
「麦わらの一味、新世界のどこかでまた出会うときには容赦しないよ」
レイヴィスは、居合わせた一味のひとりひとりに目を向けて、それから最後に視線を私で止めた。
「クレア、君は必ず自ら俺たちの元に戻ってくるだろうさ」
それだけ言い残して、レイヴィスは仲間を引き連れてその場を立ち去った。
「何だったんだ、あいつ」
ルフィは、レイヴィスの背中を見て首を捻るのだった。