第11章 過去の傷跡
『よかった、無事についた。』
展望台にたどり着き、私はホッと胸をなでおろす。
ゾロが連れて行こうとしたのが展望台だとわかり、私が道案内をしたのだが、途中もゾロは違う方向に行こうとするので、たどり着くことが出来ないのではないかとひやひやした。
なぜ道案内しているのに違う方向に進もうとするのか、全くもって意味がわからない。
『それで、どうして私をここに連れてきたの?』
「そりゃあ、お前こういうところからの景色を絵にかくのが好きだろ。」
『……え。』
ゾロから帰ってきた返事がかなり予想外で驚きつつも、じわじわと喜びが湧いてくる。
私のことを考えてくれてたんだ。その事実が何よりも嬉しかった。
『うん、好き。ありがとう。』
私が素直に気持ちを伝えると、ゾロは照れたように視線を逸らして「おう。」と一言返事をした。
『でも、今日は絵は描かない。』
私の言葉にゾロは驚いたように目を見開いてから、眉根を寄せる。
「……気に入らなかったのか。」
私は静かに首を振って、それが違うという意を示す。
『ゾロと一緒にこの綺麗な景色を目に焼き付けたいだけ。絵に留めたいとも思うけど、そうすると描くことに必死で全然景色を見れないんだよね。』
えへへ、と私が笑いかけるとゾロはぐにっと私の左頬をつねる。
『い、いひゃい!』
「焦らせんな、あほ。」
ゾロはそれから手を放して景色に目を移した。
その横顔が私にはどこか嬉しそうに見えた。