第11章 過去の傷跡
『ここには無さそうね……。』
残念ながら展示室に叔父さんの絵はなかった。
エリシエンさんの絵ならあるだろうかと見てみたけれどそれもない。
その分、アルテ島のみんなの絵が多く置かれていた。
その中でも多いのが有名画家アルテミス・カラルの絵だった。
最近の絵が多いので、この展示室も新しく設立された場所なのかもしれない。
なんだか、叔父さんやエリシエンさんがどんどん過去の人になっていくようで少し寂しくも感じる。
「用は済んだか。」
ゾロが後ろから声をかけてくる。
私が振り向いてコクリと頷くと、ゾロは「そうか。」と一言相槌を打ってから私の手を取って引っ張っていく。
「ちょ、どこに連れて行くの?」
「着けばわかる。」
ゾロの大きな歩幅についていくとなると少し小走り気味になる。
それよりも繋がれた手に意識が集中する。
私よりも遥かに大きな手。熱が伝わって、熱い。
「ね、ねぇ、こっちで合ってるの?」
「合ってんだろ、たぶん。」
ゾロは大の方向音痴だ。
彼に着いて行くだけで目的地に辿り着くとは思えない。
ちょうど通り過ぎたところに館内図の表記を見つける。
私は力強いゾロにどうにか抵抗して、館内図の前まで戻ることに成功した。
「どこに行こうとしてるの?」
「ここだよ、ここ。」
ゾロの指したところは最上階の展望台。
それでいて、ゾロが向かっていたのはそれがある棟とは全くの逆だった。
「逆じゃん!!」
というか、何なら元いた場所より下に行っていないか?
上を目指していたのに下に行くとは一体どういう原理なんだろう……と私は首を傾げざるを得なかった。