第11章 過去の傷跡
「ようこそ"アルベルゴ"へお越しくださいました。」
海中ホテルへ入った途端にすかさず女性スタッフが近づいてくる。
私たち麦わらの一味の予想通り、ルフィはすぐにここへ向かうことを指示した。
ルフィの好奇心による決定は確かに大きいが、実際のところ全員がその意見を支持していた。
「わ〜、デッケェ〜!!」
ホテルを目にしたチョッパーはキラキラと目を輝かせる。
「すげェな、クレア!」
チョッパーは私の服の裾をくいっと引っ張っりながらそう言って、こちらを見上げた。
その様子が大変可愛すぎて心臓がやられるかと思いながら『うん、そうだね。』と同意してみせる。
「うんめェもん、いっぱい食えるかなぁ。」
「そりゃあそうだろ!」
ルフィの言葉にウソップが賛同した。
目に見えて期待感が伝わってくる。
ただ、曇り顔の船員が1人いる。ナミだ。
「ちょっと待ってルフィ、こんなに大きなホテルすっごい高いに決まってるわ。」
お金にはシビアなナミが痛いところをついてくる。
彼女が散財を許すはずがない。
「ご説明が遅れてしまいました。当ホテルは初めて利用するご一行に限り、初泊を無償で提供しております。」
「「「『む、無料!?』」」」
私たちは驚きで声を上げる。
「何事もまずは試して下さらなければ顧客は増えませんから。」
スタッフはにこりと笑って答える。
「申し遅れました、当ホテル総支配人のソフィアと申します。麦わらの一味御一行様、お困りごとが御座いましたらいつでもお申し付けくださいませ。」
総支配人を名乗る女性、ソフィアさんは私たちが誰かを理解していた。それゆえに総支配人が出てきたということなのだろうか。
「ご案内する前にお一つお約束ごとがございます、当ホテルの中では誰でも等しくお客様です。勿論、海賊も海軍も。そのため、我がホテルの敷地内で争いごとは御法度。その場合には強制的にお帰り頂くことになりますので、くれぐれも平和にお過ごしくださいませ。」
笑顔を崩さず、しかし言葉には威圧感があった。
ソフィアさんはそれだけ告げると特にこちらに同意までは求めず、私たちの案内を始めた。