第11章 過去の傷跡
「順調、順調!」
「コワイくらいだな。」
"魚人島"を出た船は、いよいよ偉大なる航路(グランドライン)後半の海"新世界"へ向けて上昇中である。
各々が自由に過ごす中、私は空いているスペースに懸命に絵を飾っていた。
「これが、かの有名な芸術家の本物の絵か……って言われても、オレにはよくわかんねェなー。」
私の横でウソップが首を捻りながら絵を眺める。
「ふふっ、この調子で行くとサニー号が美術館にでもなりそうね。」
ロビンが読んでいた本から目を離して、小さく笑う。
『そんなに上手く集められると良いんだけどね。』
私は眉根を下げて、それから再び絵に目を向ける。
よく知る叔父さんの絵と、よく知るエリシエンさんの絵。
画風も絵のタッチも何もかも私の記憶のまま。
こうして身近に並べて飾れることを嬉しく思う。
「おい、前の方になんか見えてきたぞ!」
喜々としてあげたルフィの声で、一同は前方に目を向ける。
まだそれは遠くに先だが小さく漂う何かが見えてくる。
……船? いや、それにしてはもっと大きく見える。
「あれは"アルベルゴ"だわ。」
「「「『アルベルゴ?』」」」
ロビンの言葉がなにかわからず、みんなが首をかしげる。
「海中を漂うホテルよ。神出鬼没、ホテルの敷地内ではいざこざは許されない。海上でも海中でも遭遇できるのは珍しいと言われているわ。」
みんなが理解した頃には、既に船長のルフィはワクワク感を全面にだしていた。
新世界の海上に顔を出すより先に、あのホテルに向かうであろうことは理解できた。