第10章 海中の愛言葉(魚人島編)
『きっと、この城のどこかに……。』
ナミやウソップたちも外に出てきたのと入れ替わりで私は城の散策をしていた。
アーティルス叔父さんが書いたという海の中の森の絵。
それが一体どこにあるのか、検討が付かなかったけれど何となく城の中にあるのではないかと感じた。
その作品がどんな絵なのか、わからないけれどきっと見たらピンと来るのだろうと理解している。
世には出ていない、話を聞いた私と弟のリノスしか知らない存在の作品。
私は、その作品と出会えることに胸を躍らせる。
ふらりと歩いて回ると、絵画のずらりと並ぶ回廊に出た。
どれも著名な画家の描いた作品。
どのようにして手に入れているのか、謎ではあったが入手経路など特段私にとっては興味をそそるものではなかった。
『あっ』
見知った絵のタッチの作品があって、つい声を上げてしまう。
それは、エリシエンさんの絵だった。
彼の絵を見ると、どうしてか近くにいてくれるような気がしてしまう。
スッとその横の絵画に目を向けて、自然と笑みが溢れた。
これだ、と直感ですぐにわかる。
『あの時話してくれた絵は、これだったんだね。』
エリシエンさんの絵と叔父さんの絵が隣あって並んでいることが偶然のようには思えなかった。
ここからどう叔父さんの絵を持ち出すかよりも、エリシエンさんの絵だけを取り残したくないという思いが強まる。
「その絵が気になるのか?」
背後から声がかけられ、振り向くと王様がいた。
『この絵を…どこで?』
「有名な画家が置いていったんじゃもん。見事な絵でこうして城に飾ってある。」
『隣の…この絵は?』
「これも有名な画家が置いていったのだ、隣の絵を見て盛大に笑いここに飾れと押し付けられたんじゃもん。」
なるほど、エリシエンさんらしいと私は小さく笑う。
「この絵たちと関係があるのか?」
『…私の叔父さんとその親友の絵です。』
私は2つの絵を一瞥してから告げる。
「あげてもいいんじゃもん。」
『えぇ!?』
まさかの言葉に私は声をあげた。
「魚人島を救ってくれた恩人じゃもん。それにおぬしにとって大事な絵だというなら尚更だ。」
『ありがとうございます!!』
私が笑みを浮かべながら感謝を伝えると、国王もにこりと笑みを浮かべるのだった。