第10章 海中の愛言葉(魚人島編)
顔の横で小さなリップ音が鳴り、ゾロの顔が離れていく。
な、ななな、なに?いま何が起きたの??
私は混乱して目を泳がせる。
私の理解力が正しければ、彼は私の頬にキスをした…?
そう理解した瞬間に顔が真っ赤になるのを感じた。
ゾロの顔がまともに見れなくて私は視線を落とす。
「目ェ逸らすな。」
顎をくいっとあげられ、強制的に彼と視線が交わる。
真っ直ぐなゾロの視線に胸がドキドキと音を立てて、彼に聞こえてしまうのではないかと思わせる。
「返事を聞いてねェ。」
『えっと……。』
拒絶を示すつもりは少しも無い。
だけれど、私の心の奥底で"もう2度と傷つきたく無い"という気持ちが拭えないでいる。
「何がお前をそこまで縛り付けてるのか、俺にはわからねェ。だが、お前を傷つけるものは全て斬り捨ててやる。」
嘘偽りの無い真っ直ぐな瞳。
もう一度…もう一度だけ、誰かを信じてみたい。
そんな思いが湧き上がってきて、気がついたら口を開いていた。
『ずっと、私の隣にいてくれる…?』
小さな呟きを彼は聞き逃さずにニヤリと笑ってみせてから「上等だ。」と返事をした。
「お前が嫌だと言っても離れねェ。」
私はその言葉が嬉しくて小さく笑みを浮かべた。
「じゃあ、俺はひと眠りする。」
ゾロは満足したようで、そう言うとゴロリと横たわり私の膝の上に頭を乗せてすぐに眠りについた。
相変わらず寝るの早いなぁ、という感想を抱きながらも私は彼の頭を愛おしく撫でるのだった。