第10章 海中の愛言葉(魚人島編)
『善戦したかなんて私にとってはどうでも良いよ…心配かけんなって言ってるの…。』
私が口を尖らせながら言うと、ゾロはニヤリと笑って私の頭をぽんぽんと叩いた。
「すまねぇ。」
『ちょっと、何笑ってんのよ。』
本当にわかってるの?
何だか不服だわ。
私たちは海賊だ、常に命の危険に晒されている。
心配させないで、なんて無理難題に決まっているけれど…それでも少しでも"大切な人を失うのでは"なんていう恐怖を取り払いたい。
「お前ら、さっさと乗り込め!ルフィたちに合流するぞ!」
フランキーの呼びかけにウソップ、ブルックはサニー号に乗り込んだ。元々乗っていたサンジとチョッパーが2人を笑顔で迎えている。
私も乗り込もうとすると、ゾロが私の腕をパシッと掴み引き留めた。
「クレア、俺はずっとお前の横に立ち続ける。だから、お前も俺の横にいると約束しろ。」
『…うん。』
ゾロは私の答えに満足したように笑みを浮かべてサニー号に乗り込んでいった。
私は少しの間動けずにいた。
唐突なその言葉の真意は何か、ぐるぐると考え込む。
それと同時に胸の高鳴りが抑えられなかった。
顔もおそらく赤くなっているはず、熱い。
もしかしたら、ゾロは私と同じ気持ちでいてくれている?
そうだったら、どんなに嬉しいか。
だけれど、同時に苦々しい記憶も思い起こされる。
"愛"なんて、もう2度と感じたくない。裏切られたくない、傷つきたくない。そんな苦しい感情。
あぁ、そんなこと考えている暇、今はない!
とにかく早く船に乗らないと!
私は困惑を一旦抑え込んでサニー号へと乗り込んだ。