第10章 海中の愛言葉(魚人島編)
「姫様、逃げてください!ここは俺たちが!」
周囲の魚人が人魚へと声をかける。
…ん?姫様??
つまり、つまり、この娘が人魚姫!?!?
そうと聞くと絵に収めたい衝動に駆られる。
だって、人魚姫よ?
童話の中のような存在だよ??
いや、待て待て今そんな状況ではない。
「答えろ、しらほし!YESならば"死"を免れられる!バホホホ、この俺と結婚しろ〜ッ!」
バンダー・デッケンは、しらほしに向かってこの状況で求婚する。
先ほどからの怒涛の展開に私は頭をフル回転させていく。
おそらく、このバンダー・デッケンという男は悪者に違いない。
しらほしの答えは何だろうとそちらを見ると、恐怖からか涙を流しながらも「タイプじゃないんです…。」と答えていた。
えぇ、そういう問題!?
私を含め周囲の人たちは同じ感想を抱いていたように思える。
「貴様ァ〜!俺の10年の思いを踏みにじり誰と結ばれる気だァ!俺を思わぬお前など、生きているだけ目障りだ!死ね、しらほしィ〜!」
バンダー・デッケンは手に持つ斧をこちらに投げようとする。
彼女はおそらく自衛できる術を持っていないだろう。
あまりにも理不尽な言い分だが、ああいう頭のネジの飛んだヤツらはまともに話が出来ないものだ。
彼女を逃さなければ、と私が動き出そうとしたところで「逃げるな、そこにいろ弱虫!」とルフィが彼女を制止させた。
弱虫とは、随分とどストレートな悪口。
それにしても一体ルフィはどういうつもりなのか。
「遠くに行かれたら、守れなくなる!!」
「は…はい、いますっ!」
ルフィの言葉にしらほしは逃げないという選択をした。
何だかちょっとだけルフィがカッコよく見えた。
錯覚かしら?