第10章 海中の愛言葉(魚人島編)
『創造:パラシュート!』
私は凄い勢いで落ちていく中、創造でパラシュートを作りゆらりゆらりと地面へ下降する。
飛び降りる時は完全に勢いだったけれど、こうして他に足をつけるまでかなりの恐怖を感じていた。
あぁ、良かった。
私生きてる。
「おい、空から人が降ってきたぞ??」
「なんだ、あの女は。」
やばい、登場があまりにも派手だった。
注目されてしまっている。
ここは…逃げるが勝ち!!!
私はダッと駆けてその場を離れる。
とにかく、魚人島のどこかにはおじさんの絵があるはず。
それから翠藻だって、魚人島にしか生えないというのだからどこかにあるはず。何なら、そこらへんで売っていたっておかしくないわ。
"魚人たちが暮らす島を冒険したんだ!お前たちにも見せてやりてェな、海の中に森があってそれを絵に描いたんだ。魚人島に置いてきちまったけどよ。"
昔、叔父さんがそう話してくれたことを確かに覚えている。
だから、きっと魚人島のどこかに海の中の森を描いた作品が残っているはずだ。
一体、どこにあるのかはわからないけれど。
勿論、絵を探すことも大切だが、何より今とてつもない衝動に駆られている。
『絵を描きたい!!!』
遂に魚人島に来たのだ。
周りはみんな魚人や人魚、この光景を今絵に収めなくてどうするというのだ!!!
描かなければならない、その衝動が私を突き動かす。
一瞬でスケッチブックなどを用意して、どかりと道の端に座り込む。
2年前、ここへ来ることに想いを馳せた。
随分と時間はかかったけれど、私は今ここにいる。
2年前にやりたかったことが出来るというのは、とても幸せなことではないか。
もしかしたら、少し道が違えば私はここにいなかったかもしれない。既に命を落としていた可能性もある。
そう考えると、一秒も無駄にできないような気がして、私は必死に筆を走らせた。