第10章 海中の愛言葉(魚人島編)
ー ゾロ side ー
「え、ちょ!?ええ!?」
クレアが飛び降りたのを見た城の使いである魚人の男が目を丸くさせながら驚きの声をあげる。
相変わらず活発なやつだ、と俺は呆れながらも何故だがニヤリと笑ってしまう。
そういうところが変わらない、2年前も今も。
それが嬉しく感じられたのかもしれない。
「おい、俺ァ早く酒が飲みてェ。」
男をジッと見ると、困惑したように目を泳がせながら城へと再び向かい出した。
「こんな高いところから飛び降りて、あの人大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、気にすんな。」
きっと、今頃高さに恐怖しながらも無事地面に降りているのだろう。
…だが、少しだけ不安になる。
俺の見えないところで何かあったら、守ることが出来ない。
いつだって視界にあいつを入れておきたい。
しかし、縛ることはしたくない。
その葛藤が俺の心の奥底にある。
それは剣を鈍らせることにも繋がる気がしている。おそらく、捨て去るべき感情なのだろう。
だけれど、守るべきものがある。
それはまた自身を強くもさせる。
あいつにどう伝えるべきか。
男ならば真っ直ぐに伝えるべきだ。
そう決断しているはずなのに、もしもそれがあいつの負担になったらと思うと伝えるべきではないのかもしれない、と思う。
あぁ、全くもって俺らしくない。
うじうじと考え込むなんて、俺らしくない。
まあとにかく、一旦酒でも飲んで落ち着こう。
俺はクレアの降りた先を一瞥して、それから城へと視線を向けた。