第9章 再会(2年後編)
気落ちしながら歩いていると、目の前に突如人影が現れる。
「スリにご注意を。」
聞き慣れた声がして顔を上げると、意地悪そうな笑みを浮かべて私の財布を手に持つ女性が居た。
ナミだ。
『ナミ!!』
私が声を上げると、ナミは私に財布を渡してくれる。
髪は随分と長くなって、一段と大人っぽくなった気がする。
「あんまりにも盗りやすいから、ついね。」
舌をぺろりと出しながら笑うナミは相変わらず可愛らしい。
ナミは一昨日くらいに島について暇だからとショッピングなどを楽しんでいたらしい。私たちは街を歩きながらお互いどのように過ごしていたかを話し合った。
「それで、どうしてそんなに落ち込んでたの?」
『実は・・・。』
私は叔父さんの絵のことを話した。
そうするとナミは軽く「だったら盗めばいいじゃない?」と言う。
『えぇ!そんなこと、どうやって・・・。』
「だって、クレアの能力を使えば同じものを作れるじゃない?それに、叔父さんが書いたものなんだから、親類のあなたのものと言っても違わないわよ。」
なんだ、その横暴な理論は・・・と思いながらも私は首を振った。
『世界に本物は2つ存在しちゃダメだよ、特に芸術品はね。』
「だったら、限りなく本物に近い偽物にすればいいのよ。」
ナミはそう言いながら、パチリとウインクした。
「ねぇ、これもっと安くならない?」
ナミが一枚の絵を持ちながら店員に話しかけに行く。
その隙に私は叔父さんの絵の前に来ていた。
手には想像で作り出した叔父さんの絵。全く同じものだ。
だけれど、叔父さんの絵の証であるサインを2つほど消したものだ。
だからこれは本物とは言えない。
まぁ、出来栄えは完全に本物だけど、まるっきりコピーだから。
ナミが気を引いているうちに本物とすり替え、私はナミに目配せをしてから店を出る。
「じゃあ、やっぱりやめるわ。」
ナミは店員から踵を返し店を出てきた。
『上手くいったよ、ナミ!』
「店員も特に警戒してなかったわ。」
作戦は大成功、私たちは喜び合い祝杯だ!と美味しそうなレストランに入り夜遅くまで話を続けるのだった。