第8章 芸術家たちの島
『・・・全然わかんない。』
アルテ島で生活をして早1年が経った。
身長は伸びないし変わったことと言えば髪を短くしたことくらいだ。
絵を描きながら、叔父さんの残した手記を元に武器や弾を生成する毎日。最初はうまくいっているかのように思えたが、最近は全く進んでいない。
私が創造で銃を作れるのは、昔叔父さんが私たちに組み立て方などを教えてくれたからだ。小型弾や追跡弾なども叔父さんが作り出したものである。
そうして、また叔父さんの天才的な頭脳の恩恵を受けているわけだが、これが全く上手くいかない。
勿論、いつまでも叔父さんに縋ってばかりではいけないと私自身も色々な武器や弾を考えているわけだが、こっちも上手くいっていない。
再び集合するまであと1年。
いや、向かう時間も考えたら1年もないわけだ。
『時間が足りないな・・・。』
私はポツリと呟いて、ハァと大きくため息をついた。
それから横の雑誌が目に入り、ちらりと見る。
芸術品の専門誌だ。
実は、こっちが上手くいかない代わりに絵の方面に関しては随分と成果が出ていた。
絵の売れ行きは良く、この前は雑誌でも取り上げられていた。
みんなとの旅での出来事を懐かしい思い出かのようにキャンバスに描いていたら、それが評価されていた。
生憎、思い出せることが多くて描くものには困らない。
『ダメだ、一旦やめよう。』
パーツをうまく組み合わせることが出来なくて、私は一旦作業をやめることにした。そして家を出て島民が住む場所の裏手にある森に入る。
武器の生成に加えて、私は身体的な強さを身につけるためにトレーニングをしたり、能力に磨きをかける訓練も行っていた。
海軍大将の黄猿に言われたことが、ずっと引っかかっていた。
"今まで少しも能力を磨いて来なかったツケが出たねェ"
私が、もっと能力を使いこなせていたら、そうすればみんなのことを守れていたかもしれない。
能力無効化は対能力者に対しては強すぎる力だ。
しかし、それは使うものの力量次第。
私は、まだまだ弱い。弱い者が使えば、どんな力だって弱いままだ。
『誰にも、負けたくない。』
そして、みんなを守りたい。
そう強く思いながら、私は鍛練を続けた。