第8章 芸術家たちの島
---Side リノス---
マリンフォードでの出来事から早くも3ヶ月が過ぎた。
僕はそのときの活躍が認められたのか海軍本部の少佐へと昇格した。
だが、相変わらずガープさんの代わりに書類仕事を行うような扱きの使われ方をしている。
「用が無いなら出て行ってくれませんか、先輩。」
「先輩だと思ってるなら、もっと先輩扱いしてくれよ。」
海軍本部の一室のデスクで必死に仕事をする目の前で、悠々と椅子にあぐらをかいて座り飴を舐めるティリ先輩が僕の言葉に反論した。
「僕は先輩と違って暇じゃないんです。それとも、ガープさんに頼まれた書類仕事を手伝ってくれるというんですか?」
僕が淡々と告げると、ティリ先輩はハァとため息をついた。
ため息をつきたいのは僕の方だ。
「お前、本当にまだ15歳?」
僕がギロリと睨むと、先輩はスッと目を逸らした。
一体僕がこうなったのは誰のせいだと思ってるんだ。
怠惰な上司と先輩に突飛な姉が僕をこうさせたんだ。
「大佐のくせにこんなところでサボっていて良いんですか?」
ティリ先輩はマリンフォード以降、大佐へと昇格した。
あの日はかなり先輩もやる気を出して海賊たちを蹴散らしていたな、珍しい。
「元々ボクは仕事なんてしたくないんだ。だから大佐になんかなりたくなくてずっと断ってたのに、遂に人手不足だからって拒否権がなくなったんだ。それだけ!ボクの意思じゃない。」
先輩はそんな屁理屈をこねて、ムッと口を尖らせた。
「それに、G-5に応援へ行けってお達しまで出た。」
「G-5・・・ですか。」
G-5・・・それは新世界にある支部のことだ。
応援ということは、所属は変わらずガープさんの元だが一時的に行くということか。
「何も今すぐじゃない、1年後か2年後か・・・まあいつかはわかんないけど、人手不足に駆り出されるってワケだ。」
ティリ先輩は心底嫌だという顔をした。
そりゃ新世界なんて、面倒ごとの宝庫だろう。
「まぁ、その時はお前も道連れにするかな。」
それは是非ともやめて貰いたい。
「麦わらの一味については何か情報が入ってきましたか?」
「いーや、何一つ音沙汰がない。」
僕の問いかけに先輩が答える。
姉さん、無事だと良いけれど。
僕はそう願いながら書類仕事を続けた。