第8章 芸術家たちの島
「そのあとのことは、アーティルスとの手紙のやり取りで状況を知った程度のことしかわからないけれど。何度目かの手紙で西の海の島を拠点にすることで落ち着いたと知らされた。その後のやり取りには君やリノスが生まれてどんな様子かも記されていた、だから私たちは君たちのことを知っていたんだ。」
その手紙には一体どんなことが書かれていたのだろう。
「君の両親が亡くなったことも手紙で知った。絵を売りに海に出た際、海賊に襲われ亡くなったと。そこから生き延びた人が、遺品をアーティルスに渡してくれた。遺品の一つを両親・・・つまり君の祖父母にと手紙で送ってくれたことを覚えている。」
シン・・・と沈黙が流れた。
両親が死んだときのこと私は覚えていない。
叔父さんが話してくれたこともない。
きっと私が大きくなったら話そうと思っていたのだろうか、だけれどその前に彼との別れが訪れてしまった。
「重い話になってしまったね。」
カラルさんは眉根を下げて席を立ち、近くの棚をガサゴソと漁った。
「あぁ、これだ。」
カラルさんは何かを持って、再び椅子に座った。
そして、一冊の手記を私に渡した。
「これは、アーティルスがこの島に残していったものだ。すまない、旅立つ時に渡そうと思ったが君が残ると言ったので、絵に集中して貰いたいと一時預からせて貰ったよ。」
私はその手記をめくる。
日記でも書かれているのかと思いきや、そこには武器や弾薬の生成方法が描かれていた。
「それはアーティルスがロジャーの船に乗っていた時やそれ以前に書かれたものだ。私たちが、彼が若くして海に出ることを許可した理由はその手記を見てわかるように、彼が武器の扱いにも長けていたからだ。元々、商船にも乗る予定ではあったからね。」
商船は一定のルートしか通らない。
きっと叔父さんは、もっともっと広い世界を見たかったんだ。
「また何か聞きたいことがあればいつでも尋ねてくれ。さぁ、絵の練習の続きをしようか。」
『えっ、でも、絵を売っても良いって・・・。』
「売っても良いとは言ったが、練習をやめるとは一言も言っていないよ?」
カラルさんはニコリと笑い、私は自由にはまだ遠いなぁと口を尖らせた。