第1章 溺れた女
『あぁ、暇だわ。』
私---ディストラクト・クレアは、たった1人で小舟での旅を楽しんでいた。
少し前はもう少し大きな船を使っていたのだけれど、前の島で海賊に盗まれてしまい、この小舟生活を余儀なくした。
自身の大事な道具をリュックで持ち歩いていたことは不幸中の幸いと言えるだろう。
小舟に揺られながら、いつかどこかの島に着けばいいと呑気に船旅をしているわけだが、早一週間どこにも着く気配がない。
何か刺激的なことが起こらないかな……。
そんなことを考えてしまった罰でも当たったのか、突如ザパーンと大きな波打つ音が聞こえた。
『待って、嘘でしょ。』
海王類が顔を上げたことで、大きな波がこちらに押し寄せてくる。
置いてあったリュックを抱え、この状況を回避する方法を考えるが、そんな暇も与えぬ程呆気なく私は波に飲まれた。