第8章 芸術家たちの島
扉を開けて部屋に入ると、室内の埃っぽさにゲホッと咳をして口元を覆った。
しばらく使われていなかったのだ、埃が溜まってしまうのは当たり前だ。これは掃除が必要だな、と強く感じた。
私は、部屋の窓を全て全開にして喚起をする。
部屋の中を見渡すと、いくつかの写真が飾ってあることに気がついた。それに近づいて手に取ってみる。
アーティルス叔父さんと私の両親だ。
その隣の写真は、小さい男の子が2人。叔父さんと私の父親だろうか。それから、叔父さんと父とその両親(私にとっては祖父母)の家族写真などがあった。
何だか急激にこの家を身近なものに感じる。
出会ったことがなくとも、覚えていなくとも、私と血の繋がった家族の住んでいた家だと思うと、ここにいるだけで彼らを少しだけ近くに感じられた。
それから、階段を上り二階へ上がる。
寝室もあったが、それ以外の何部屋かは全て画材道具や絵が飾られているような、絵描き部屋だった。
『わ、これ凄い。』
画材道具の中には珍しい色の絵の具やなかなか手に入らない絵筆など様々なものがあった。
それから絵を見てみる。
『叔父さんの絵だ。』
私の知っているものと絵のタッチや色々と違うものはあったが、それが叔父さんのものだと私にはわかった。
『じゃあ、これは・・・。』
叔父さんのものではなく、知らないサインが入った絵。
『ヴィン、セント?』
サインはそう書いてあるように読めた。
それは叔父さんと暮らしていた時、私に父親の話をする際に出てきた名前だということを覚えていた。
つまり、これは私の父親の絵だ。
自身の父親の絵がどのようなものなのか、今初めて目にする。
叔父さんとはまた違う系統の絵、だが確かに上手く目を引かれる。
芸術家である私にとっては、写真で見るよりも絵を見る方が何となくその人を捉えやすい。
今日1日で、私はたくさん両親という存在に近づけたような、そんな気がした。