第8章 芸術家たちの島
『ゲホッ、ゲホゴホッ!』
私は波に飲まれて島へと再び流された。
咳き込みながらどうにか砂浜で立ち上がる。
創造した小舟は大破していて使い物にならなくなっていた。
「お嬢ちゃん、無駄だよ。ここの海は特殊なんだ。」
『構わないで下さい、私は行かなきゃならないんです!』
私は船の残骸を使って再び小舟を想像して海へ繰り出す。
しかし結果は同じだった。
島の人たちが心配そうに見守る中、数度繰り返したが返す波によって島を出る事は叶わなかった。
「クレアちゃん、何度やってもこの島からは出られはしないよ。」
カラルさんの声に私はぺたりと座り込んだ。
『ルフィは苦しんでるのに・・・私はここには居られないんです。行かなくちゃいけないんです。』
自然と流れてくる涙を止めることが出来ない。
「それは十分にわかった。だけど、島は通常は潮の流れで外に出れないようになっているんだ。月に一度潮の流れが変わるタイミングでしか外には出られない。」
『・・・それは一体いつなんですか?』
私が問いかけるとカラルさんはにこりと笑った。
「今月はまだ来ていないから、そんなに先の話じゃない。だからどうか、それまで療養してはくれないかな?君が島を出る時は私たちがサポートするよ。」
私は島の人たちの顔を見て、それからコクリと頷いた。
島の人たちの優しさが心に染みた。
それと同時に、他のみんなは一体どこにいるのかと気になった。
新聞に書いてあったのはルフィのことだけ。
他のみんながルフィと一緒にいたという文章は特に見受けられなかった。
私と同様にくまによって飛ばされたのなら、それはそれで良かった。けれど、どんな場所に飛ばされているかはわからない。
私のように暖かい人たちの多い場所ではなく敵しかいないような場所かもしれない。
そう思うと、手放しでこの環境を喜ぶ事はできなかった。