第8章 芸術家たちの島
「つまり、ディストラクト家はこの島の出身で、彼らの血縁者である君もこの村に縁があるというわけさ。私が君を海軍に売らない理由を納得してくれたかな?」
『えぇ、十分に。』
私はお茶を少し飲んで、ふぅと吐息をついた。
ここがどこなのかはわかった。
島の人たちが私に敵対意識を持つつもりがないことも。
『あなたは一体・・・?』
私が問いかけると、男は「あぁ、すっかり忘れてた。」と軽快に笑って言った。
「私は"アルテ島"の長であるアルテミス・カラルだ、よろしく頼むよ。」
『アルテミス・カラルって!!あ、あ、貴方があの!?有名な画家の!?』
「あぁ、いかにもそうだよ。」
私は思いがけずに出会えた有名な画家に驚きを隠せなかった。
「まぁ、アーティルスには負けるけれどね。」
カラルさんは、ふふっと小さく笑った。
「そうだ、君の仲間のことが新聞の記事に載っていたんだ。」
カラルさんが徐に取り出した新聞を受け取り読むと、そこにはルフィがエースを助けるために乗り込んだことや、エースが死んだことが書かれていた。
エースは確かルフィのお兄さんだと話に聞いた。
記事を読んで、ルフィの苦しみがどれだけ辛いのか、計り知れないけれど私が叔父さんを失った時の苦しみと重ねてしまった。
『私、早く行かなきゃ。』
私はベッドを飛び出て海へ向かう。
「待て、そんな身体でどこへ行こうと言うんだ!」
カラルさんが私を止めようとするが、私はそれを振り切って海に向かって全速力で走る。
ルフィが苦しんでる、こんな時に仲間として側にいられないなんて有り得ない!!
行かなきゃいけない、私はそれだけを思って海の先を目指す。
島民たちが私を止めようとするが、私はそれでは止まれない。
『創造:小舟!』
私は創造の力で小舟を作り上げて海へ出る。
波は穏やかだ、前みたいな失敗はしない。海王類だって乗り越えてみせる。
小舟の創造は少し寿命の消費が激しいけれど、そんなこと構ってられない。
私は小舟を漕ぎ島の沖まで来た。
この調子だ、と思ったところで急に船が逆走してそのまま波に飲まれた。