第6章 海の上での賑やかな日々
『全然描き切れない・・・。』
色々なことがありすぎて筆は進めど終わらない。
1日48時間あれば良いのに、とも思ったがそうなれば書くものも倍になるだけなのだろう。
私は、ダイニングの机に頭をゴツンとぶつけて顔を伏せた。
船が島を出て絵を描けるようになってからずっと絵を描いているから流石に疲れてきた。
集中力を必要とするからか、目がチカチカする。
「なんだ、今日も夜更かししてんのか。」
バタンとドアが開いて聞こえてきたのはゾロの声。
『ゾロに言われたくない。』
「俺は見張りだ。」
ゾロは冷蔵庫を開けて水を取り出しゴクゴクと飲む。
上半身はまた裸で、タオルを肩にかけていた。
汗をかいているようなので、いつものようにトレーニングをしていたのだろう。
『服着てよ。』
「あ゛?こっちはトレーニングしてアチィんだよ。」
ドカリと椅子に座ってタオルで体を拭く。
その動作の中でチラリと私の絵を見た。
「そんなに描くのか。」
『色んなことがありすぎて、これでも足りないくらい。』
明日になれば、また新しい出来事があってまた描くものが増える。
これは義務じゃない、ただ私が描きたいから描いている。
だけど、その描きたいものが多すぎて追いついていかない、それが悔しい。
この一味の冒険を全て描いて絵として残したいと思っているのに。
『そうだ、息抜きにでも昨日の話の続きをしてよ。昨日は確か・・・。』
ガタンとゾロが徐ろに立ち上がり私に近づいてくる。
私は突然のことに驚いて言葉を失った。
どうしたの、と声をかけようかと思った瞬間、身体が地面から離れる。
『な、ちょっと、ゾロ!?』
ゾロに抱き抱えられていたのだ。
ゾロはダイニングを出てズンズンと進んでいく。
「気がついてんのか知らねェが、めちゃくちゃ顔色悪いぞ、お前。今日はもう寝た方が良い、船上で体調悪くして周りに迷惑かけたらどうすんだ。」
ゾロが心配そうに私の顔を覗き込みながら言った。
そうだ、描きたい欲望に駆られていたけれど、ここで体調を崩したら元も子もない。みんなに迷惑はかけたくない。
『・・・うん、そうだよね。心配してくれてありがとう、ゾロ。』
ゾロは私の言葉に小さく笑った。