第5章 恐怖の島で過去は巡る (スリラーバーク編)
『心配かけてごめんね。』
そう言うクレアの顔をジッと見てから、俺は視線を逸らしてその場を離れた。
入れ替わりでチョッパーが様子を見に来たようだった。
クレアが俺たち共にエニエス・ロビーで戦い、そして仲間に入った。ただ数日を共にしたあいつが何故そこまで俺たちに手を貸してくれるのか、何か魂胆があるのではないかと、他の奴らが甘い分俺はそう考えていた。
しかし、あいつはただ一生懸命に俺たちに手を貸してくれていただけだった。
そこまでしてくれたのに、仲間になることを悩んでいた。
クレアには何かきっと事情がある。
それは、あいつと弟の会話でわかることだった。
具体的には何かわからないが、誰かに利用され裏切られてきた。
そして、大切な人を失った経験もある。
それ故に、仲間という存在も信じることもあいつには難しいのかもしれない。そして、何かを失いたくないという思いも人一倍に強い。
だから、俺はあいつの味方でいる。
どんな厳しい状況でも大丈夫だと、信じさせてやりたい。
安心させてやりたい。
「はぁ・・・。」
俺は外に腰を下ろして、ため息を吐きながらガシガシと頭をかく。
安心させたいと思っていたのだが、何度も悲しい思いをさせてしまった。
あの時、抱きしめた感触がまだ残ってる。
小さく柔らかかった。
思い出して俺はブンブンと顔を横に振る。
余計なことは考えるな。
雑念は剣を鈍らせる。
だけれど、いつかあいつの闇を払えたら良いと思う。