第5章 恐怖の島で過去は巡る (スリラーバーク編)
ゴウゴウと燃える炎を見ながら、私は過去を思い出していた。
【おら、これお土産だ。】
エリシエンさんがニッと笑いながら、変な置物を渡してくる。
『なに、これ。』
【なんか土産に良いって言うから買ってきた。】
エリシエンさんはいつもよくわからないものを旅の土産に持ってくる。それに需要があるのかを少し考えて欲しいと叔父さんはいつも語っていた。
【アーティルスは何してんだよ。】
「おじさんはかいものだよ!」
リノスがニコニコと笑いながら告げて、エリシエンさんに抱っこを求めていた。
エリシエンさんはそれに答えてリノスを抱き上げる。
【そういえば、この前送った絵は見たか!傑作だろう!】
この前送ってくれた絵といえば、一面花畑の絵だった。
『ホントにあんなところあるの?』
【あぁ、あるとも。俺は見たものしか書かねぇのさ。】
『だけど、私とか叔父さんとかリノスはそこにいないのに写ってるよ。』
エリシエンさんは、いつも送ってくれる絵に私たちも共に描いてくれていた。
まるで一緒に旅をしているかのような気持ちになれた。
【俺くらいになると想像で補えんだよ。】
エリシエンさんはそう言って私の頭にポンポンと手を置いた。
「ねー!どうぶつさんのえ、かいてよ!」
【おーおー、いいぞー!書いてやろう!】
エリシエンさんはリノスの言葉に了承する。
あぁ、そんな日々が幸せだった。
たくさん笑い合って、それだけで満ち足りていた生活。
だからこそ、エリシエンさんが亡くなったという一報は、私たちを一度どん底に突き落とした。
泣いて泣いて泣きまくって、そうして立ち直ったというのに。
再びエリシエンさんとさよならをしなければいけない、この瞬間。
こんな仕打ちをしたモリアを、心底憎いと感じる私は、何か間違っているのだろうか。