第8章 《エルヴィン》堕ちる2 ※
「5日連続で急に有給を使ってしまったから、さすがに来週は出ないとどやされる。」
苦笑いを浮かべるエルヴィンにエマは身震いした。
自分を監禁するために平気で会社を休み、来週何食わぬ顔をして出社するのだろうか…この男は本当にイカれてる。
…!!
待てよ。来週から会社なら…
「じ!じゃあ私のことも解放してください!」
エマは久しぶりに声を張った。体も前のめりになる。
イカレ頭のこいつのことだから、自分が留守でも監禁は続くかもしれない。
けれどほんの僅かでも解放してもらえる可能性があるかもしれない。それならここで声を張らないわけにはいかなかった。
驚いた顔でしばらくエマを見つめるエルヴィン。
そして顎に手をあて何かを考えるような仕草をしたあと、薄ら笑ってその口を開いた。
「そうだな…選択肢を与えようか。」
その言葉にエマは胸が高鳴る。
一気に期待が膨らんで、ゴクリと喉を鳴らして次の言葉を待った。
「日曜の夜まではここで私と今まで通り過ごしてもらう。
それで日曜の夜君に聞くよ。この先も私と居たいか、帰りたいか。」
「そんなの、」
“帰りたいと言うに決まってる!”という言葉を飲み込んで、エマはどうにか冷静を保ちながら答えた。
「…分かりました。」
大きな手が頭を撫でる。
見上げると、いつも通りの笑みを浮かべたエルヴィンが一度頷いた。
その瞬間、エマは心の中でガッツポーズを作った。
あと二日…あと二日こいつの言うとおりにして我慢していれば、解放される!家に帰れる!!
そう考えたら、裸同然の格好で歩かされていることも、数時間置きにセックスすることも、全然耐えられそうな気がした。
だって後二日なのだ。いつまで続くか分からなかった地獄から解放されるまで。
そう思うとなんだか食欲も湧いてきて、その日は出されたお粥を初めて完食することができた。