第8章 《エルヴィン》堕ちる2 ※
「心と違って身体は単純でね…すぐに覚えさせてやることができる。
身体さえ手懐けてしまえばあとは結構楽なんだ。身体とのバランスを保つために自然と心が動き出す。“普通”と順序は違えど、いずれは必ず愛してくれるようになるんだよ。」
「そんなの本当に心が動いたとは言わない!錯覚やまやかしだ!」
「最初はそうかもしれない。けれど時間をかければ必ず」
「ふざけたこと言わないで!!」
エマはとうとう怒鳴り散らしながら勢いよく立ち上がった。
固く握った拳が震えている。唇も、全身が戦慄いていた。
この気狂いした男の言動に対する強い憤りのせいだ。
目尻に涙を溜めながらキッとエルヴィンを睨みつけた。
「あんたは自分勝手すぎる!私の気持ちも…人権さえも無視するような行動をして、どうしてそんなことまで言えるの?!」
この男を改心させたいとかそういう思いは一切ない。
たぶん無理だ。ここまでイカれた奴を叩き直すのは。
ただこのまま黙って話を聞くのはどうしても耐えられなくて、エマは感情をぶちまけたのだ。
しかしこの行動が目の前に座り込む男を刺激することになろうとは、この時のエマは予想もしていなかった。
「君も薄々感じているんじゃないのか?」
「…何を」
「昨日、君は自ら私を求めた。」
「!!んぅっ!」
一瞬の出来事だった。
スっと男が立ち上がったかと思うと突然腰を引き寄せられ唇が押し当たる。
瞬時に口を固く閉じありったけの力を込めて引き剥がそうとするが、身長180cmを優に超えるであろう巨体相手にはどう足掻いても無理だった。
「んん!んーっ!」
腰と後頭部を固くホールドされてキスから逃れることが出来ない。
上唇と下唇に交互に吸いつかれたり、表面を舌全体でベロリと舐められたり舌先でなぞられたりする。
鼻から必死に息を吸うが、長くなるとどうしたって酸素が足りなくなってくる。苦しい、苦しい…
喉の奥でくぐもった悲鳴を出すのが唯一の抵抗だったが、そんなものは効くはずもなく一
「んっはっ、んんぅ、」
ついに隙間が開いてしまった。