第6章 ◆ファン様100名到達記念 《リヴァイ》 教訓 ※
「……これでよし!っと。痛くない?」
「あ、はい…ありがとうございます。」
丁寧にテーピングされた足首を見る。
さっきは強がったけど本当は少し痛んでいた。やっぱり素直に手当してもらって良かったと思った。
エマさんとこうして二人きりにもなれたし…
「やっぱり軽く捻ってたね。念のため今日は午後からの訓練は休むこと!班長にも伝えておくから。」
ベッド脇の椅子に腰掛け、足首を優しく擦りながら大好きな笑顔を向けられた。
俺はもうそれだけで心臓を射止められ、さらには下半身がムクリと反応してしまう。
何とか自身を落ち着かせ平常心を保った。
「すみません、何から何まで。」
「いいのいいの~!じゃあ少し休んだら食堂おいでね。もうすぐお昼だから。」
そう言って踵を返し出て行こうとする背中を、俺は気が付いたら呼び止めていた。
「エマさん!」
「…どうしたの?」
腕を…掴んでしまった、勢い余って。
クソ…何も言うことなんて思いついてねぇのに呼び止めちまった…
「ジャン?まだ痛い?」
「いや…それは全然大丈夫です。…あの、エマさん。」
顔を覗き込んできたエマさんと視線ががっつり合う。
あぁダメだ…頼むからそんな顔して見ないでくれ…
もう、我慢がきかなくなっちまう…
「ジャン…?きゃぁっ!!」
「すんません…少しの間でいいっすから…」
俺は、エマさんを自分の胸に抱き寄せていた。
「ちょっ!ジャン!どうしたの?!」
「ダメなんです…俺…エマさんのこと好きすぎて…おかしくなっちまいそう…」
「えっ?!ちょっ…ごめん!離して…?」
胸を押し返そうとするのを力で押さえ込んで、文字通り抱きしめた。
遠くの方でエマさんが俺の名前を何度も呼んでる気がするけど、そんなのはどうでもよかった。
エマさん、すげぇ良い匂い…
花の蜜みたいに優しくて甘くて…
鼻腔いっぱいに吸い込んで、エマさんの香りを堪能していたら、俺の理性はもうガタガタと崩れていくしかなかった。
「おい。」
しかしその時、エマさんの背中越しに聞こえた低い声。
その声にあまり聞き覚えがなかった俺は咄嗟に顔を上げたが、顔を見て愕然とした。