第5章 《リヴァイ》変わらない場所
店の隅にある椅子に腰を下ろすリヴァイ兵長。
たいてい私服で来るのに珍しく兵服に身を包んでいるあたり、やはり多忙なのだろうか。
この2ヶ月の間にまた新しい茶葉が入ってきたけれど、忙しいかもしれないし今日は試飲をお勧めするのはやめておこうかな…
そんなことを考えながら、いつもの紅茶を棚から引っ張りだして丁寧に包んでいると、静かな店内に低い声が響いた。
「悪いが、一杯淹れてくれねぇか?」
驚いてカウンターの向こうへ目をやると、こちらをじっと見つめるリヴァイ兵長と視線がぶつかった。
私は微笑んだ。
「もちろんです。リヴァイ兵長から頼まれるなんて初めてですね。どれにされますか?この間また新しい種類の茶葉が入ってきたんですけど、それにされますか?」
棚に並んでいる茶葉を眺めながら問いかけた。
「いや、いつものやつを。」
「えっ?」
意外な要望に私はまた少し驚いて聞き返してしまった。
「いつも買ってる茶葉で、頼めるか?」
「あ、はい!もちろんですよ!今お淹れしますね、少々お待ちください。」
「待て。今日は二人分淹れてくれ。お前の分も。」
「え?私の分もですか?」
「そうだ。」
「わ、わかりました。」
仮にも店主とお客さんという立場で、営業中にお客さんと紅茶を飲むだなんて失礼な気がしたけれど、なにせリヴァイ兵長が言い出したことだから拒否するわけにもいかない。
私は手早くお湯を沸かしながら、リヴァイ兵長の姿を盗み見る。
椅子に浅く腰掛けて背もたれに背中を預けながら、両手を胸の前で組んで脚を組んでいた。いつも通りの光景だ。
普段買っている紅茶をわざわざここで、しかも私の分もだなんてどうしたのだろうかと思った。
なにかいつもとは違う雰囲気だし、妙な違和感を感じずにはいられない。
「お待たせしました。」
コトリ、と二人分のティーカップを置いて、私は向かいの席に座る。
目線だけを私へ向けてお礼を言うリヴァイ兵長。
やっぱりどこか雰囲気が違うと思った。
「…お疲れ、ですか?」
様子を伺うように話しかけた。