第5章 《リヴァイ》変わらない場所
カウンターから窓を見ると、もう外は薄暗い。
ここ最近だいぶ日が暮れるのが早くなってきた。今日ももうすぐ店じまいだ。
私はふと店の壁にかかっているカレンダーを見た。
「もう2ヶ月経ったのか…」
今月はまだリヴァイ兵長が来ていない。
きっちりではないけれど、いつもだいたい1ヶ月ごとに茶葉を買いに来てくれていたのに、最後に訪れた日からもう2ヶ月半になろうとしている。
忙しいのだろうか…
元々休みもかなり少ないみたいだし、というかそもそも休日でもまともに休んでいるのかも分からないくらい多忙そうだから、もしかしたらすごく忙しいのかもしれない。
「…………まさか」
あれこれ色々考えていると、一番考えたくない理由が降って湧いてしまった。
リヴァイ兵長は調査兵団の兵士。
人類のため、壁の外の巨人に果敢に立ち向かう立派な兵士だ。
壁外の恐ろしさは聞いた話でしか知り得ないが、壁外調査が行われる度に毎回犠牲者が出ていることくらいは知っている。
その犠牲者の多さから、調査兵団は慢性的な人員不足だと言う話も…
人類最強のリヴァイ兵長が巨人なんかにやられるなんて考えにくい話だと思ったが、ここへ通い始めて3年、こんなに長い間姿を見せないことはなかったからつい不安が過ぎってしまう…
そしてその不安は考え出すと瞬く間に大きくなって心の中を埋めつくそうとしていた。
「ううん、そんなことない。絶対に。」
まとわりついた不安を払おうと一人で首を振っていると、扉の鈴が鳴った。
「はいっいらっしゃ……!!」
慌てて笑顔を作って扉の方を向くと、そこに立っていた人物に私は言いかけた挨拶を、小さく吸った息とともに体内へ吸い込んでしまった。
「まだ開いてるか?」
そこに現れたのは、緑のマントを羽織ったリヴァイ兵長。
「もっもちろんです!」
会えた……よかった…
私は真っ先にそう思って、心の底から安堵した。