第5章 《リヴァイ》変わらない場所
「いや…」
違うと答えてカップに口をつける。
もう随分と見慣れた、独特な持ち方。
「………」
「………」
沈黙が訪れる。
いつもなら意外とお喋りなリヴァイ兵長が色々と話を振ってくれたりするのに。
私もいつもの調子で気さくに話しかけることが、なんとなくできなくなってしまっていた。
いきなり二人で紅茶を飲むことになって驚きつつ内心ちょっと嬉しかったのだけれど。
本当にどうしたというのだろう…
この沈黙が気まずい訳ではないけれど、いつもと何もかも違いすぎて、純粋にリヴァイ兵長のことが心配になってしまう。
聞いてもいいだろうか…
いや、でも触れられたくないことかもしれないし、店主の分際でそこまで出過ぎた真似をするのもどうかと思う。
「ここで紅茶を飲んでいるときだけだ。」
「え?」
これからどうしようかと考えを巡らせていると、向かいから声がした。
明らかに言葉が足らなくて意味がわからなかった私は、顔を上げた。
「…ここで、こうしている時間だけが、俺にとって唯一」
“休まる場所だ”
そう言ったリヴァイ兵長の口が僅かに弧を描いていて、あぁ、本当にリラックスしてくれてるんだな、よかった。なんてことをこの時の私は思っていたような気がする。
「リヴァイ兵長にそう言って頂けるなんて嬉しい限りです。茶葉以外は何も無い店ですが、良ければこれからも」
“いらしてくださいね”
そう言おうとした言葉を遮られた。
“茶葉だけじゃない”
そう言うリヴァイ兵長の、声に。
「こうして…話しをすることができる、お前と。」
「!!…」
固まる私をじっと見つめるリヴァイ兵長。
たぶんすごく間抜けな顔をしていたと思う。
それでも彼は構うことなく続けた。