第5章 《リヴァイ》変わらない場所
「最近急に秋めいてきましたね、お元気でしたか?」
いつもの紅茶を戸棚から出しながら、カウンターから少し離れたところにある椅子に腰掛けているリヴァイ兵長に話しかける。
足を組んで腕を組みながら座っている。いつもの光景だ。
「あぁ。相変わらずクソみたいな仕事ばかりで嫌になるがな。」
「大変そうですね…でもそう思えるのも、一生懸命に頑張っていらっしゃるからこそではないでのですか?」
「エルヴィンにケツを叩かれるからな、仕方なくやってるだけだ。」
「フフ、いつもお疲れ様です。あ、今日はちょうど今朝新しい茶葉が手に入ったんですけど、良かったら飲んでいかれます?」
「ほう…なら、一杯くれるか?」
「もちろんです。ちょっとお待ちください。」
カウンターの後ろにあるコンロでお湯を沸かす。
お店では購入前に茶葉を試飲できるサービスをしているのだ。
お湯を沸かしている間にティーセットの準備をする。
その間リヴァイ兵長の方をちらちらと見るが、テーブルに頬杖を付ながらブラインドをまだ下ろしていない窓から、茜色に染まる外の景色を眺めていた。
リヴァイ兵長は鋭い目つきと無愛想なところと、全身から放たれる威圧的なオーラから、最初は冷たくて怖い人だと思っていたけれど、この3年でそのイメージはがらりと変わった。
意外とよく喋ってくれるし、実は情に厚くて優しい。
毎月こうして少しずつ話をしている程度だが、それだけでもリヴァイ兵長の内に秘められた素敵な人間性は充分に知ることができた。
「どうぞ。熱いので気をつけてくださいね。」
テーブルにカップを置くと、リヴァイ兵長は短くお礼を言ってカップを持ち一口啜った。
一つ一つの動作が丁寧で思わず見入ってしまう。
独特なカップの持ち方をする手は白くて繊細そうな指をしていて、とても綺麗だなと思った。
「…悪くねぇな。」
「お口にあったようで良かったです。」
リヴァイ兵長の“褒め言葉”に純粋に嬉しくなって笑顔を返すと、少しだけ表情が緩んだ気がした。