第5章 《リヴァイ》変わらない場所
私はウォール・ローゼの小さな町で紅茶の茶葉を扱う商店を営んでいる。
5年前に唯一の肉親であった母親を亡くし、その母親が大事に守ってきたこの店を継ぐ形で、私が店主となった。
歳は今年で26。
周りは適齢期なのに恋人の1人もいないのか、とか時には見合いの話を持ちかけられることもあるけれど、そんな気は全く起きなかった。
それに、今はこの店で働いているのが一番落ち着くし、純粋に母親の形見でもあるこの店を大事にしていきたいという思いの方が強かったのだ。
「エマちゃんこんにちは。いつもの茶葉、いただけるかしら?」
「ユニコおばさん、こんにちは。コレですよね?はい!」
「ありがとう。」
差し出された銀貨と引き替えに茶葉を渡すと、長らくうちの常連さんであるユニコおばさんはいつものように少しの世間話をしてから店を後にした。
小さな町の、小さなお茶屋さん。
繁盛している方ではないけれど、細々とやれてる。
それにお客さんとのやりとりは好きだ。
「眩しい…」
傾き始めた西日が眩しくて目を細めながら、私は店の窓のブラインドを下ろした。
今日もあと1時間ほどで閉店だ。
反対側の窓のブラインドを下ろしにかかったところで、カランカランと扉が開いた音がしたので顔を向けた。
「いらっしゃいませ。」
入ってきたお客さんに笑顔で挨拶をすると、残りのブラインドはそままに、カウンターへ戻って接客に入る。
「今日も、いつものですか?」
「あぁ、頼む。」
ラフなロンティー姿で現れたお客さんは、3年ほど前から月に一度、毎月茶葉を買いに来てくれる兵士さんだ。
「いつもありがとうございます、リヴァイ兵長。今日はお休みですか?」
「そうだ。」
そう、ここに毎月買いに来てくれている兵士さんというのは、調査兵団のリヴァイ兵士長。
今やこの壁の中でこの人のことを知らない人などいないだろう。
かくいう私も、最初にリヴァイ兵長が来てくれた時はもの凄く驚いた。
こんな小さな町の特に有名でもないお店にどうして来てくれたのかは分からないけれど、ここの紅茶を気に入ってっもらえたようで、コンスタントに買いに来てくれるようになったのだ。