第4章 《エルヴィン》堕ちる ※
「…………」
目を覚ますと、見慣れない天井。
ぼーっとする頭で記憶を手繰り寄せていくと、ハッとして勢いよく身体を起こした。
当たりを見回すと窓のない、部屋。
真っ白な壁に、大理石だろうか…鏡のように磨かれた床に自分が横たわっていた大きなベッドが一つ。
視覚から入る情報はそれだけで今が昼なのか夜なのかも分からないし、さっき自分を襲った人物もこの部屋にはいなさそうだ。
一とにかく、ここから逃げなきゃ
こんな訳のわからないところに連れてこられて、このまま大人しくここに留まるなんて選択肢はない。
誰もいないうちに外へ出て逃げるべきだ。
そう思いベッドから出ようとすると、自身の格好を見て愕然とした。
「ど、どうして………」
大きめのシャツを1枚着ているだけの自分。
そしてその下には当たり前に身に付けていたはずの下着が、上下ともに取り去らわれていたのだ。
その瞬間、頭の中は再びパニックになった。
どうしてないの?!
まさか私…さっきの奴に……
いや!そんなはずはない!そんなことあってたまるか!
とにかく格好なんて気にしてる場合じゃない。
一刻も早くここから逃げなければ自分の身が危ない。
ベッドから飛び降りると、一目散に駆けた。
ドアを開けると長い廊下。の先に玄関らしき大きな扉が見える。
きっとあそこが出口だ!
シャツ1枚のままなりふり構わず扉へと走った。
が、ドアノブに手をかけようとしたその時、背後から聞こえた聞き覚えのある声に体が硬直する。
「随分とゆっくり眠っていたね。やはりアルコールと同時摂取すると効果は増大してしまうようだな。」
静かな足音がこちらへ近付いてくる。
もうあと一歩で外へ出られるというのに、金縛りにあってしまったかのようにその場から1ミリも動くことが出来なくなってしまった。
「そんな格好で白昼堂々出歩く気か?」
すぐ後ろで声がする。
怖くて振り向くこともできない。
一くそ!動け!動け!
言うことを聞かなくなった体は小刻みに震え出して、冷や汗が背中をつたった。