第4章 《エルヴィン》堕ちる ※
「さすがに夜中は涼しいなぁ…」
終電になるつもりはなかったけど、つい盛り上がって遅くなってしまった。
最寄り駅で電車を降りて夜風にあたると、酔って火照った体がすーっと冷えて気持ちがいい。
私は都内の大学に通う4年生。
今日は同じ学部の仲良しメンバーと4人で、晴れて全員就職先が決まったので就活お疲れ様会として飲んでいた。
やっと辛い就活が終わったという解放感からお酒も進み、気が付けば終電の時間だったという訳だ。
今日は久しぶりにパァっとお酒も飲めてとても楽しかった。
明日からは学生最後の夏休みだ。
バイトして遊んで、楽しい思い出をたくさん作ろう。
私はほろ酔いになりながら実に清々しい気分で、一人暮らしのアパートへと歩いていたその時だった。
「一?!!」
後ろから何者かに口を塞がれ、羽交い締めにされた。
私はパニックになってとにかく手足をジタバタさせるが、まったく振り解けないどころかビクともしない。
「んっんん!!」
「大人しくしろ。」
後ろから低い声が聞こえて、私は背筋が凍りついた。
殺される…!!!
本能がそう叫んで、素直に暴れるのを止めた。
その代わりに体は勝手にカタカタと震えだした。
怖い、怖い怖い怖い!!!
何をされるの?!やだ、離して!!!
恐怖で体は震えるばかりで、その場から一歩も動けない。
口に当てられた布のような何かからは、酷く甘い匂いがして頭がクラクラする。
そのうちに視界がゆっくりとぼやけていき、瞼が勝手に降りていってしまいそうなのを必死に止めようとした。
だけど、頭の中で鳴り響いていた警告音は次第に遠ざかっていき、そこからの記憶は途切れてしまったのだった。