第1章 《リヴァイ》浴衣と花火とりんご飴と※
花火大会の会場に着くとちょうど太陽が沈んだばかりで、空はオレンジから青そして夜空の色のグラデーションになっている。
開始まであと一時間ほどだ。
「リヴァイさんリヴァイさん!りんご飴も買っていいですか?!」
「お前、食いもんならもう散々買っただろ。そんなにいっぺんに買ったって食えねぇぞ。」
花火が始まる前に屋台で適当に飯を買って食べようとしているのだが、既に俺の両手にはたこ焼き、イカ焼き、プライドポテト、ベビーカステラがある。
「りんご飴、大好物なんですよ!甘いのは別腹だし、大丈夫です!」
エマはニカッと笑ってそういうと、目の前のりんご飴の屋台へパタパタと小走りで行ってしまった。
俺はやれやれと小さなため息をつきながら、その背中を歩いて追った。
今日のエマはやけにテンションが高い。
浴衣で花火大会に来れたことがそんなに嬉しいのだろうか。
何にせよ、普段はあまり見せない無邪気な姿に俺の心臓はさっきから何度も射抜かれている。
「しかし今年も人が多いな。」
「リヴァイさん、相変わらず人混み苦手ですよね。」
「そういうお前もだろ。何でそんなに嬉しそうなんだ。」
「こういう時は人が多い方が雰囲気出るじゃないですか、だから今日は大丈夫なんです!」
「…まぁそれは分からなくもねぇが。」
「あ、でも……」
ふと見ると、今の今までキャピキャピと喜んでいたエマの顔が少し曇っている。
「どうかしたか?」
何かを言いかけて黙ってしまったエマの顔を覗き込むと、急に不安そうな目をこちらへ向ける。
そして、俺の問いかけにエマは恥ずかしそうにボソボソと話し始めた。
「リヴァイさん…普段からすごくかっこいいのに、浴衣着たらもっとかっこよくなっちゃったから、その…不安になっちゃうなぁって。」
「は?」
いきなりのよく分からない言葉に変な声が出てしまった。
「だってこんなに沢山の人がいて、可愛い子もいっぱいるし、リヴァイさんも目立つからちょっと自信なくなっちゃうっていうか…お祭りの人混みは好きだけど、ちょっと不安です。」