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【進撃の巨人】‎熟れた果実を貴方に【短編集】

第3章 《エルヴィン》現実逃避 ※




頭に乗せられた手で髪を撫でられながら、優しい声が耳の中へ入り込む。


「今は勤務時間中ですので…」


「君は真面目なんだな。」



顔を上げ、至って冷静に言葉を返すエマに、エルヴィンは目を細めながら何度もその柔らかな栗色の髪を撫でた。


「……エルヴィン団長。もうすぐお客様がお見えなのでは?」

「あぁ…そうだな。」


エマはそれに動じることなく冷静に告げると、エルヴィンは降参だというように両手を軽く上に上げる。
エマはそんなエルヴィンを横目に会議資料を机の上で揃え始めた。





エマは周りの幹部達よりもかなり若い。

実戦経験こそ他の幹部勢には劣るが、巨人の討伐に関しての技量は新兵の頃から抜きん出ていて、強い精神力も併せ持っている。そしてとても賢い。


そんなエマに新兵時代から目を付けていたのがエルヴィンで、今回の就任も彼の鶴の一声で叶ったことだった。


彼女自身、異例の早さでの分隊長就任に当初は戸惑っていたが、エルヴィンの見立て通り今では良くやってくれている。

また、物事を客観的に判断できる冷徹さを持ちながら部下思いの一面もあり、エマは兵士からの信頼も厚かった。


加えてその見目麗しい外見から男性兵士からの人気は特に高く、しばしば口説かれたり告白されたりといったこともあるようだ。

だがエマ自身、男に媚を売るようなことは一切せず、そういったことには興味が無いような素振りさえ見て取れた。





しかしそんな冷静でクールな彼女には、ほかの兵士には知られていないもうひとつの顔があったのだ。














書類を整理するエマへ近づき、腰を屈めて耳元へ唇を寄せるエルヴィン。









「今夜、私の部屋へ来てくれるか。」




「……了解しました。」







耳元で低く厚みのある声が囁かれる。

エマはエルヴィンの方を向くと、少し目を細めてかすかに微笑み、返事をした。










そう、彼女に向かって優しく微笑むエルヴィンのみが知る、エマの秘められたもうひとつの顔一





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