第13章 《リヴァイ》スパークル
畳み掛けるように喋る。
例えばこういう時は、「そんな過去があったんだな、辛かったな」と生徒の気持ちに寄り添ってやるべきだったろうか。
「…知らない」
「自分のことだ、それくらい分かるだろう」
「そんなの知って何になるっていうのよ!大体あんたには関係ない!」
エマは声を荒らげ怒りをあらわにしていた。これも初めて見る、感情をむき出しにした姿。
「あぁ俺には関係ないな。だがさっきも言った通り、俺は自分のために教え子には一人残らず卒業してもらわねぇと困るんだ。だからお前が真面目にやるようになるためなら手段は選ばねぇ」
「だったら尚のこと困ればいい!私が留年して、あんたは教頭から無茶苦茶に責められればいい!」
「ハッ、散々な言われようだな」
「何がおかしいのよ…」
「いや、初めてお前が“楽しそう”で少し安心しただけだ」
「はぁ?!どこが!」
ガタンッ!と机に両手を着いて勢いよく立ち上がったエマに睨まれた。
眉間には深い皺を寄せ、“楽”とは真反対の“怒”の感情に満ちている。
が、リヴァイからしたら決してそうは見えなかった。
「俺からしたら、お前は今楽しそうに見える」
「あんた目おかしいんじゃないの?!それとも何?それがあんたの口説き方?随分と斬新ね!!」
「なぁ富井。一生意地張ったまま生きるのは想像以上にしんどいぞ」
「うるさい!!私の事なんて何も知らないクセに!!」
リヴァイがそっと感情を込めて言った途端、金切り声が教室内にこだました。
叫んだ本人は椅子から立ち上がったまま項垂れるように俯いている。その肩は息切れのせいで上下していた。
重く、長い沈黙が流れる。そのうちにズッと鼻を啜る音がして、見れば机の上には滴が落ちていた。
リヴァイは静かに口を開いた。
「知るわけねぇだろ。お前が話さなきゃ俺は何も知らないままだ」
「……」
「……」
「……だれ、にも言わないで」
「あぁ」
「担任にも、」
「分かってる」
顔の見えないエマを真っ直ぐ見据え、リヴァイは頷いた。
するとエマは力が抜けたみたいにストンと座面に臀をつき、下を向いたまま重い口を開いたのだった。