第13章 《リヴァイ》スパークル
「……リヴァイ先生って、」
会話は唐突に始まった。しかも珍しくエマの方から。
手を止め顔を上げるがエマは窓の外を見たまま。彼女と同じ方を見れば、雀が一羽だけで飛んでいた。
「私のこと好きなの?」
「……は」
彼女の突拍子の無さすぎる問いに呼吸も忘れた。
そして次の瞬間リヴァイは初めて見た。エマの〝笑った〟顔を、初めて。
「だって毎日ろくに教科書すら開こうとしない生徒にここまで親身になるんだよ?そんな面倒なこと、好きでもなきゃしないでしょ」
フフッと、眉を八の字にして嘲るような笑みを浮かべる。
「先生、イケメンだって女子から人気だもんね?生徒を取っかえ引っ変えしてるって噂も聞いた事あるんだけど実際どうなの?もしかして私のことも狙ってる?」
「………」
「え、なに、黙っちゃって。まさか図星?」
愉しそうに笑うエマの瞳をリヴァイはじっと見つめていた。
普通ならここで怒る…いやブチ切れているだろうか。
毎日毎日誰のために補習してやってると思ってんだ!と声を荒らげるかもしれない。
でも今のリヴァイの中に“怒り”の感情はなかった。
なぜなら、愉しそうに笑っているはずエマの瞳の奥は、とても寂しそうに見えたから。
そしてきっと、そう見えたのは錯覚ではない。
「……お前は誰かに甘えられているか?」
「は…?いきなり何言い出すわけ?」
「友達でも恋人でもいい。周りに一人でもそういう奴がいるかって聞いてんだ」
「何それ…この歳なって甘えるとか意味わかんないし」
「2年前、お前の両親が離婚したことをこの間知った」
静かに、淡々と、特になんの感情も含めず続ける。
そしてそこまで話したところでエマの目の色が変わった。
「なに人のこと勝手に調べてんのよ、気持ち悪」
「中学では成績トップで、高校には推薦入学だったらしいな。だがそんなお前が変わったのが高一の二学期からだ。授業には出席するが試験はほぼ全教科で赤点。それからは補習の常連。不真面目になったのは親の離婚のせいか?」