第13章 《リヴァイ》スパークル
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リヴァイはエマのことを調べていた。
知りたいと思った。彼女がなぜあんなにも無気力なのか、その原因が。
これも教師の性なのだろうか。勝手にやらせておけばいいものを、教え子ともなるとそうもいかなくなる。
まだ17年しか生きていないのだ。
それだけしか生きていないのに、人生を諦めてしまうような心のひもじい人間にはなってほしくない。
「推薦入学…」
夕方の、誰もいない職員室のデスクに広げた資料。
そこに記されていたエマの情報にリヴァイは驚いた。
「ほとんど最高評価じゃねぇか」
見ているのは中学の時の内申だ。
それがなんと5段階中ほぼ5。もちろん数学も。
さらに高一、高二の時の成績も調べると、高一の二学期から急激に成績が落ちていることが分かった。
リヴァイは今年、高三で初めてエマの教科担任にあたったため、全て初めて知る事実である。
元々はできる奴だったのになぜ…
知ってしまったらさらに知りたい。
そしてできるなら彼女を救ってやりたい。
何も見ようとしない、あの空洞のような瞳を思い出して、そっと息を吐いた。
*
「…おい。夏休みなくなってもいいのか?」
「別に」
エマのための居残り授業を始めてから4日が過ぎ、補習期間は残すところあと1日となっていた。
エマは相変わらずだ。
シャープペンも持たなければ、教科書さえ開こうとしない。
だがリヴァイは彼女に教えることを止めなかった。
ひとつ気づいたことがあるのだ。
どうでもいい、嫌いだと言いつつ、毎日登校してくるし居残りにも出る。本気でどうでもいいと思うならそもそも補習なんかに来ないはず。
それが毎日来るのだからまだ救いはあると思ったのだ。
改善の余地があるなら大いに協力してやるつもりだったし、それ以上に、登校してくる〝本当の理由〟を突き止めてやりたかった。
「明日で補習期間は終わるが、このままじゃお前を夏休みに入らせるわけにはいかんぞ。家で復習は?してんのか?」
「やると思って聞いてます?」
「いちいち癇に障る言い方しかしねぇ野郎だな…可愛げがねぇ」
「別に可愛くなくていいです」
「はぁ…」
「……」
沈黙。
教科書を捲る音と、ペンを走らせる音だけがしばし空間を占拠する。