第11章 《エルヴィン》黒の彼氏 ※
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そして迎えた日曜日。
最寄り駅まで迎えに来てくれていたエルヴィンさんは今日も爽やかな風貌で、眩しいほどにかっこよかった。
出会った瞬間からハートを射抜かれ頭がくらりとしながらも、エルヴィンさんに手を引かれながらなんとか彼の自宅へたどり着く。
「何もない部屋だけど、ゆっくりしていってくれ」
「…わぁ!」
お邪魔しますと靴を脱ぎ、廊下の先のドアが開かれると目の前には壁一面の全面窓。
さすがタワーマンションの上層階、といったところだろうか。窓の外は大小さまざまな宝石を敷き詰めたかのような夜景が広がる。
「すごい…」
私は感嘆のため息とともにただその一言しか出なかった。
「全て人の手で作られた光だと思うと感慨深いな。人間は本当に高度な技術を習得したものだよ」
「そうですね…」
横に並ぶエルヴィンさんの話に素直に頷きつつ、私は素晴らしい夜景にしばしの間釘付けになっていた。
チュ
「?!」
「はは、驚きすぎだろう」
ふいに頬に触れた柔らかい感触。エルヴィンさんに、キスをされた。
目をまん丸にして驚く私を見てエルヴィンさんは目を細める。
「あっ、あああの!ちょうどお腹も空くかなと思って簡単に作れるご飯でもと思っていろいろ食材とかスーパー寄ったんですけど!」
動揺を誤魔化すように思いつくまま言葉を並べて喋ったら文法がめちゃくちゃだ。でもそんなの考える余裕もなかった。
エルヴィンさんはそんな私を見て肩を震わせながら笑った。
「えっエルヴィンさんがいきなりキスなんてするから…!」
「ハハハ、すまない。夜景を眺める君の横顔があまりにも綺麗だったから、ついね」
「!!」
「クク…ほら、またそんな小動物みたいに目を丸くして。本当に可愛い奴だな」
頭をポンポンと撫でられて、笑って、かと思いきや瞬きの間に真面目な顔になって、唇同士が静かに重なる。
心臓がその限界まで血液を送る。バクバクと煩い音を立て続けていて本当にそのうち壊れてしまいそうだ。
「…エルヴィンさんは、私を殺す気ですか」
「え?ハハ…殺しはしないさ。こんなに可愛い君を殺すわけがないよ」
そんな冗談を言って私たちは笑い合った。
今日はエルヴィンさんの好きなカルボナーラを作るんだ。